TVでリポーターが「このケーキすごい美味しいです」と伝えているのにテロップでは「すごく美味しい」と表記されることがよくあります。
そもそも、「すごい」は終止形、もしくは連体形。「すごく」は連用形です。「美味しい」という形容詞を修飾する形は終止、連体ではなく連用形ですので「すごく美味しい」が正しいと言えます。ここでは「すごく美味しい」が正用と言えそうです。
おそらくテロップで〝修正〟するのはテレビ局の規範があるからだと思います。しかし、言葉、特に日本語では本来の規範からすると正しくない使い方でも、その使い方が普及し一般化してくると正しい使い方だと認めざるを得なくなる傾向があるようで、この用法ももうしばらくすると正しい日本語として紹介されるようになるかもしれません。
では、なぜ「すごい美味しい」と言ってしまうのでしょう。
あくまでも私の感想ですが、本来飾り言葉である「すごい」がそれだけで(感覚的に)意味を持ってしまったのではないかと思うのです。そのケーキを口に入れた瞬間に「美味しい」より「すごい」のほうが印象的というか、この時代まずいものを探す方が難しいくらい美味しいものに溢れているので美味しいのは当たり前、美味しいをわざわざ口にするのは陳腐だ、それを強調する「すごい」だけで伝えたい気持ちは伝わる-のではないかと。
もう一つ浮かんだのは、「すごく」より「すごい」のほうが言いやすいから。「sugo-ku」だとゆっくりしゃべらないと喉の奥でつっかえた感じになりそうでしょ? その点「sugo-i」は言いやすいのではないかしら